キサラギの苦労


 ……彼女はとある所へ向かっていた。プクリンのギルド、そこでは様々な依頼をこなしてくれる。そんな話を聞いて……。



 プクリンのギルド、それは海がよく見える高台に立っていた。かがり火が常に燃えているところを見ると人はいるらしい。
だが扉は固く閉ざされ、中には入れそうにない。
 しかし彼女はそんなものでは諦めなかった。なぜなら大切な依頼があったから、諦めきれないから……。
その思いと共にギルドの扉を叩こうと入り口へと近づいていく。そしてギルドの入り口の3歩ほど手前で、それは起こった。

『ポケモン発見! ポケモン発見! 足跡は……!?』
 いきなり下から誰かの声が響いた。……相当戸惑ってるようだ。
『ど、どうしたディグダ?』
『この足跡は、ジュプトル! ジュプトル!!』
『なんだとォォォォッ!!』
 ……どうやら彼女の足跡にかなり驚いているらしい。……何故だろうか。
 だが、彼女はそんな疑問を与えてはもらえなかった。ギルドの中から次々とポケモンが飛び出してきて彼女を包囲したのだ。
何が何だか分からずにうろたえる彼女、その彼女に「覚悟しろ!」だの「よくここに来れたな!」などと声がぶつけられ、彼女をさらに混乱させる。
「……いったい何ですか? これは」
『『『問答無用!!!』』』
「わあぁぁぁぁぁぁっ!?」
 ポケモン達が一斉に襲いかかって来る中、彼女は悲鳴を上げるのが精一杯だった……。




「…………」
「ごめんなさい、キサラギちゃん」
「……」
 彼女は怒っていた。確かに腕はいいんだろうけど彼女がジュプトルってだけでこの扱いだ、多少の理由があるにせよひどい。
しかも知り合いのキマワリがいなかったらこんなものでは済まなかったろう、その点ではまだ運がよかったと言える。
 しかしそんなもので彼女の怒りは収まるはずもなかった。
「いやぁ、済まなかった。最近ジュプトルが問題になっててな。ピリピリしていたんだよ」
 ペラップは彼女にそういって頭を下げた。だが襲われた本人はたまったものじゃない。
せっかく依頼をしに来たのにこんな洗礼はあったものではない。
「……キサラギちゃん、今日はなんでここに来たんですの?」
「……依頼があって、探してほしい人がいるの」
 彼女、いやキサラギは一枚の紙を取り出した。
「“みどりのそうげん”で私と一緒に探検してたアブソルのミナヅキとはぐれてしまったの。一緒に救助に行ってくれる人を探しに来たんだけど……」
 キサラギの目からは僅かに涙がこぼれていた。。それほど相方が心配なのだ。
「……そうですわねぇ、……チーム“しんそく”、協力していただけますか?」
 ……“しんそく”。それはこのプクリンのギルドでもっとも新しいチームでアチャモのルストとナエトルのフォリアが組んでいる探検隊だ。
「キマワリ、そう勝手には――」
「うるさいですわ!!」
「ひえっ!」
 ペラップが口を挟もうとするがそれをキマワリが一喝し、ペラップは口を閉じた。
「行きますわよ! キサラギちゃん、“しんそく”!」
「おお〜」
 “しんそく”の二人がそれに同調し、気合いを入れるとキサラギの表情が少しずつ晴れ間を取り戻してきた。
「お願いね。キマワリ、“しんそく”のお二人」
 キサラギも気合いを入れた。

 ……待っててミナヅキ、あなたは私たちが助けるから。
キサラギはそう決心をして、足を踏み出した。