ミナヅキの訪れ


 ……彼は、かの噂高いプクリンのギルドへ向かっていた。パートナーを探すための依頼をしに……。




 プクリンのギルドは“トレジャータウン”と呼ばれる町の片隅にある崖にあった。
 近づいてみるとかがり火がパチパチと音を立てて燃えていた。……留守ということはなさそうだ。
しかし扉は固く閉ざされていた。だがそれは防犯のためだということを彼は噂で聞いていたため、落ち着いてギルドの入り口の手前の格子状の穴の上へと進む。すると
『ポケモン発見! ポケモン発見! 足跡はアブソル、足跡はアブソル!』
 と下から声が響き、ギルドの入り口がゆっくりと開いた。そして彼は一瞬息をのみ、ギルドの中へと足を踏み入れたのだった。




「……パートナーを探してほしい?」
「はい! 彼女は気が強いんですが、寂しがり屋で……放ってはおけないんです」
 彼は質問してきたペラップに堂々と答えた。
「……ヘイヘイ、まさか断るのかい?」
 近くにいたヘイガニはペラップに聞く。多少イヤミな口調に聞こえなくもないがそれは気のせいだろう。
「あっしは協力したいでゲスけど……」
 ヘイガニと共にいたビッパもペラップに言った。
「……と言っても、そのパートナーの特徴が分からないじゃないか」
「「あ……」」
 ヘイガニとビッパは動きを止める。ペラップの意見は正論だった。依頼が分からなければ達成はできない、それは当然のことだ。
「そういうわけでアブソルくん、依頼の内容は?」
「は、はい。僕はミナヅキというのですが、パートナーのキサラギと“みどりのそうげん”ではぐれてしまったんです」
「……!? それってさっきここに来たジュプトルの名前じゃないか?」
「ええ、彼女はジュプト――って、……ここに来たんですか?」
 彼、いやミナヅキはうろたえ始めた。
「……入れ違いでゲスか」
「運が悪いんじゃないかい? ヘイヘイ」
 ヘイガニとビッパは口々に言う。だがミナヅキはすぐに落ち着きを取り戻してこう言った。
「……なぁんだ。心配して損した気分です」
「は?」
 今度はペラップがうろたえる番だったようだ。
「彼女は僕を見つけられたにしろ、できなかったにしろ、ここには戻ってくるでしょう。だったら僕はここでのんびり待っていればいい。そう思いません?」
「た、たしかにそうだが……」
 うろたえるペラップを尻目にミナヅキは笑みを浮かべた。
「じゃ、そういうことで。ただ待たせてもらうだけなのも嫌なので、何か手伝わせて下さい」
「……う〜ん、よし。じゃあ食事の準備を手伝ってくれ、指示はチリーンに従うようにな」
「は〜い!」
 ミナヅキは元気よく返事をし、はしごを登っていった。


「(図々しい奴でゲスね)」
「(でも悪い奴じゃなさそうだぜ、ヘイヘイ)」
「(キマワリさんと“しんそく”は大丈夫でゲスかね?)」
「(心配するなって、ヘイヘイ)」
 ヘイガニとビッパはミナヅキが去った後もしばらくひそひそ話を止める事はなかったのであった。